墓じまい(改葬)の正しい手続きと費用
核家族化が進むにつれて、少子高齢化社会が叫ばれるようになり、大きな問題となってきているのがお墓のお世話です。
身内のお墓の管理が大変になってきたら、墓じまいについて真剣に考えてみましょう。大事なお墓だからこそ、墓じまいは失敗したくない。
そこで、具体的な墓じまいの手続きについてご紹介します。また、墓じまいにかかる費用はどれくらいなのか?についても紹介します。
墓じまいとは、お墓の撤去・解体をすること
墓じまいとは墓を終うことです。お墓を解体・撤去するという意味で、寺院や霊園からお墓そのものを片付けて返還することです。
墓じまいする理由は様々
「先祖代々のお墓があるが、それは新幹線で2時間以上かかる地元にある」
「自分自身は現在の土地で家を建てたので、もう地元に帰ることもない」
「一人っ子で独身。両親の墓を守ることはできるが、自分の後を引き継いでくれる人はいない」
このような人にとっては、「自分の通いやすいところに新しく納骨をし、お参りを続けること」が第一の選択肢として挙がってきます。
墓じまいをしてお墓の悩みから開放
・遠方なのでお墓参りになかなか行けない
・高齢になって体力的にもお墓参りが負担になってきた
・お墓にかかる管理費が大変
・子供に迷惑をかけたくない
・独身で承継者がいない
など、お墓の悩みは尽きず、近年墓じまいをする人が増えています。墓じまいとは、お墓(墓石)を解体・処分し、墓地跡を墓地の管理者(お寺や霊園)へ返還することです。
改葬はお墓の遺骨を、別の場所へ移動させることですので、厳密には少し違います。墓じまいをすると同時に遺骨も移動させる必要があるのでセットで行われます。
「お墓を自宅の近くに移したら、散歩ついでにいつでもお墓参りに行けて、お墓もいつもピカピカ。毎回新しいお花に取り替えるのが楽しみになった。」
「親戚一同よく話し合い、それぞれが負担にならない距離にお墓を移動させた。今では親戚と日にちを合わせて、毎年一緒にお墓参りに行くようになった。」
など、墓じまいをして「ずっと悩んでいたお墓の悩みが解消された」方も多いようです。
墓じまい後の遺骨の供養先は?
墓じまいをして、取り出した遺骨の供養方法は、建墓、納骨堂、永代供養、樹木葬、散骨、手元供養などがあります。親族としっかりと話し合い、納得のいく供養先を見つけましょう。
改葬は勝手にできません
改葬(遺骨を別の場所へ移すこと)は役場への申請が必要なので、勝手に遺骨を移動すことはできません。ただし、手元供養や散骨は、改葬には該当しませんので役所への申請は不要です。
お墓に埋葬されている遺骨を、新しい別のお墓(永代供養、樹木葬、納骨堂)へ移す場合、受け入れ先が埋蔵・収蔵施設として国から認められてる場所であれば、「改葬」にあたりますが、自宅同様に山、海などに散骨する場合は、改葬には該当しません。
改葬するには、寺院や霊園を管轄している役場に改葬許可申請を行い、改葬許可証の交付をしてもらいます。
墓じまいをすることのメリット・デメリット
墓じまいをして自宅近くに遺骨を移すと、お墓参りが負担にならず定期的に供養ができます。定期的に供養することで、お墓を綺麗に保つことができ、ご先祖様も喜んでくれるでしょう。
また、独身者など、お墓の承継者がいない場合は、墓じまいをして永代供養墓へ移せば、先祖の遺骨が無縁仏にならないよう、お寺がその後もずっと管理・供養してくれるので安心です。
そしてお墓が遠方にある場合は、交通費もバカになりません。交通費が気にならない距離にお墓を移せば経済的負担も軽くなります。
また、毎年お寺に納める管理費も削減できます。年間の管理費の相場は1~2万円ですが、ずっと払い続けると結構な金額になります。墓じまいをすればもちろん納める必要はありません。
きちんと供養ができて、経済的にも負担が軽くなる墓じまいですが、一方でトラブルになるケースもあるので頭に入れておきましょう。
親族間でのトラブル
「先祖代々受け継がれているお墓。これから先もこの場所で永遠にお墓を守っていくんだ。墓じまいなんて絶対反対!」といった考えの親族が一人でもいる場合、墓じまいが困難になる場合もあります。
その場合は、決して無理に説得しようとせず、ご自身の考えや墓じまいのメリットなどを丁寧に話すと同時に、相手の意見にもきちんと耳を傾け、お互いが納得いくまで話し合いましょう。
お寺とのトラブル
檀家を引き留めたいと強く願うお寺の場合、高額な離壇料を請求されることもあります。(まれに車一台分ぐらい請求されるケースもあるようです。)将来入ってくるはずの収益分を、高額な離壇料で補填する意図があると考えられます。
そもそも離壇料とはお布施であり、お寺の住職にいくら包めばいいか聞いても「お気持ちで」と答えるものです。私たちからしたら、「お墓を引っ越す」ということは、不動産の物件選びの様な感覚かもしれませんが、お寺側は「先祖代々、遺骨を預かり供養している」といった認識でしょう。
墓じまいを決めたら、まずはお寺へ行って誠意を持ってきちんと相談し、事務的な処理だけで終わらせるのは避けましょう。トラブルが起こらないよう予め信頼関係を築いておくことも大切です。
急速に進むお墓の無縁化
お墓の承継者がいなくなった場合や、承継者はいるけど放置され、管理費が滞納されているお墓のことを無縁墓といいます。管理費が5年程度滞納されると、墓地管理者はお墓を処分しても良いことになっています。無縁墓になりお墓を処分されることになった場合、一般的には遺骨が取り出され、他の無縁墓の遺骨と一緒に合葬されるという流れになります。
遺骨と墓石が撤去されたお墓は、その後また新たなお墓の受け入れ先となります。近年、霊園によっては半分以上が無縁墓など、お墓の無縁化が急速に進んでいるのが現状です。
無縁墓になる前に墓じまいをおすすめします
「うちは先祖代々受け継がれているお墓。今まで守ってきてくれたご先祖様のことを考えると、申し訳なくて墓じまいなんてできない。」こう考える方も多く、墓じまいになかなか踏み切れない方も多くいらっしゃるのも事実です。
しかし、冷静に考えてみると、お墓というのは法的にも土地賃貸契約の一種であり、「お墓を買う」という真の意味は、実際に「その土地を買う」ものではなく、「墓地の一画を使用する”権利”を買う」もので、あくまでも墓地からお墓を「借りて」いる状態なのです。
ですので、「”購入した”と表現される”借りもの”の墓地」は他人に売ったり貸したり、お墓以外に使うことはできません。それに先述した通り、毎年お寺に管理料を納める必要がありますし、管理料を滞納すれば墓地の管理者はお墓を撤去することもできます。
撤去後は、また新しい「土地の借り手」が「土地を使用する権利」を購入し、その一画をお寺から「借りる」のです。そう考えると「先祖代々受け継がれているお墓」というのは、ご先祖様が購入・所有した土地ではなく、ご先祖様が墓地の一画を使用する権利を取得し、その後、代々賃貸契約が続いているとも言い換えられます。
ご自身が供養される側になった場合を想像してみてください。
先祖代々続く賃貸契約の場所にこだわり、ケアが怠りがちな無縁墓に入るのと、その世代の生活環境に合わせてお墓も移動。いつも自分の子孫のそばで供養される。
どちらの方がいいでしょうか?
きっと後者を選ぶ方が多いのではないでしょうか?
ご先祖様もきっと同じ気持ちのはずです。
本当に「ご先祖様に申し訳ない」ことは何なのか、今一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。
墓じまいの手続きと準備
墓じまいはお寺や行政、石材店などへの色々な手続きが必要です。きちんと手続きしないと罰則の対象になってしまうケースもあるので注意してください。手続き方法はお寺や地域によって様々ですが、一般的な墓じまいの流れは以下の通りです。
①遺骨の供養先を決める
お墓を終うと当然ですがお墓の中の遺骨をどこか別な場所へ移動させなくてはいけません。この遺骨を移動(引っ越し)させることを「改葬」と言います。改葬は勝手にできませんので、まずは遺骨をどのように供養するか決めましょう。
※自宅供養や散骨で供養される場合は、改葬ではありませんので行政手続きは不要です。なので、埋葬元である寺院や霊園と話し合いができていれば、墓じまいし遺骨を移動しても大丈夫です。
②改葬許可申請書を取得する
遺骨を寺院や霊園は移動する場合は、現在、遺骨が埋葬されている寺院や霊園を管轄する市区町村役場から改葬許可申請書を取得します。改葬許可申請書は窓口に置いてあります。また、ホームページからダウンロードできる役場も多いです。
③受入証明書を発行してもらう
遺骨の移動先を決めたら、受け入れ先(寺院や霊園)から「受入証明書(使用許可証)」を発行してもらいます。役場によっては不要な場合もありますので事前に確認しておいてください。
④埋葬証明(署名・捺印)をしてもらう
現在、遺骨が埋葬されている墓地管理者(寺院なら住職)に、改葬許可申請書の「埋葬元」の欄に署名・捺印をしてもらいます。
⑤改葬許可証を交付してもらう
現在、遺骨が埋葬されている寺院や霊園を管轄する市区町村役場に、改葬許可申請書ならび必要書類を提出し、改葬許可証を交付してもらいます。
※市区町村役場によっては、故人との続き柄がわかる戸籍謄本や身分証明証が必要になる場合もあります。
⑥魂抜き(性根抜き)
住職に依頼し墓石に宿った魂を抜くお経をあげてもらいます。
⑦墓石の解体・処分
石材店に墓じまいを依頼し、墓石を解体処分し墓地跡を更地に戻して墓地の管理者へ返還します。
⑧遺骨の供養
遺骨と改葬許可証を、受け入れ先の寺院・霊園に持っていき遺骨を納めます。
散骨するのであれば、散骨業者へ依頼してください。
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墓じまい事例(一部)
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